心理学と悪事:善良な人も悪さをする理由

悪事の心理学 善良な傍観者が悪を生み出す

悪事の心理学』という本を読みました。この本は、アマースト大学のマンウェル・ファミリー生命科学教授であるキャサリン・A・アンダーソンさんによって書かれました。彼女は、社会規範を形成する暗黙のルールについて長年研究されたそう。

というわけで、なぜ心の優しい善良な人々が時に悪事を働いてしまうのかについてみていきましょう。

沈黙の心理

まず、私たちが悪事に直面したとき、なぜ沈黙してしまうのでしょうか?その答えは人間の本性に隠れています。事件が起きると、「悪い人が悪事を働くのだ!」と思いがちなんですが、善人も状況次第で悪事を働くことがあります。例えば、自分が疑問に思っていても、「伝統だから」「みんながやっているから」という理由で、悪い行動をしてしまうことがありますよね。

伝統と没個性化

日本での例といえば、阪神タイガースの優勝時に道頓堀川に飛び込むファンの行動。非常に危険で、警察も止めるように呼びかけているのに、伝統として続けられているんです。なぜこんなことをするのでしょうか?一つの理由は、集団の中で匿名化され、自分の行動への責任感が薄れるから。この現象を「没個性化」と呼びます。集団が大きくなるほど、この効果は強まり、悪い行動がエスカレートしていくんです。

研究が明らかにしたこと

研究者たちは、集団の規模と暴力性の関係を調べました。ジョージア州の集団リンチの記事を分析したところ、集団が大きいほど暴力が増すことがわかったんです。また、脳科学の進歩により、一人でいるときと集団でいるときの脳の反応の違いも明らかになりました。

大人数でゲームをすると、自分のことを深く考えずに行動するようになり、周りに合わせたり、期待に応えようとする傾向が強まるんだとか。個人差はありますが、集団にいるときにその傾向が顕著な人ほど、悪事を働きやすくなるそうです。

命令に従う心理

さらに驚くべきことに、権威ある人から命令されると、どんなに過激な行動でも従ってしまうんです。しかも、命令に従った人々は、その行為を「価値のある行動」と信じ込むようになるんだとか。自分が悪いことをしていると自覚していても、命令に背くことはほとんどないそうです。

いじめの心理

いじめの問題でも同じことが言えます。いじめの多くは、周りに人がいる時に起きているんです。見て見ぬふりをする子がほとんどで、加担するケースも少なくありません。いじめっ子がクラスの上位にいることが多いから、下の子は止められない。止めに入ると、自分が次のターゲットになるリスクがあるからです。いじめが常態化した集団では、いじめが当たり前になり、間違った行動だと認識されないこともあります。本来は悪い行為でも、集団の同調圧力で正当化されてしまうんですね。

いじめを止める方法

でも、いじめを止めるために立ち向かう生徒もいます。そういう子には、同級生や先生からのサポートがあり、コミュニケーション能力が高いという特徴があります。社会的立場が高いと、いじめを止めるリスクが少ないので、積極的に介入できるんです。また、いじめ抑制のポスターを掲示するだけでも効果があるんだとか。「いじめはカッコ悪い」というイメージを子供たちに持たせることが大切なんですね。

いじめを止めるには、専門的なプログラムや訓練を受けた子供たちを増やすことが必要です。自己主張や共感、社会的スキルが高いと、うまく立ち回れる自信が生まれ、いじめを止められるようになるんです。いじめっ子から恨みを買っても、周囲の協力を得られやすいから、いじめられる側に回りにくいんですね。

まとめ

このように、善良な人でも状況次第で悪事を働いてしまうことがあります。私たち一人ひとりが、いじめや悪事に立ち向かう意識を持つことが大切だと思いました。身近な人間関係を大切にし、悪事を許さない環境を作りたいです。