「ものを買うときに快感と不快感の影響はものすごく強いらしい」という本を読んだ話

「欲しい! 」はこうしてつくられる 脳科学者とマーケターが教える「買い物」の心理

「欲しい!」はこうして作られるという本を読みました。

この本の著者は脳科学者のマット・ジョンソンさんと、科学的な視点でマーケティングをやってるプリンス・ギューマンさんのお二人ですね。

この本は科学的な知見から消費者の消費行動を分析しておりまして、今回は本書の快感と不快感が購買行動にどう影響するかについての内容についてみていきます。

快 - 不快 = 購入

本の中では、ものをため込んじゃうタイプの人と、逆にものを捨てたがるタイプの人が比較されてました。この違いは快感と不快感の差からくるもので、人間は快を求めて不快を避ける生き物だからこそ、こういう行動の違いが出るみたいな感じっす。

で、スタンフォード大学の実験によると、商品を見た時は快楽を司る脳の部位が反応して、値段を見た時は不快を感じる部位が反応するんだとか。つまり商品の魅力 > 値段のときに買っちゃうってわけですね。

ものを手放したがる人はものを持つより捨てる方が快感があるし、逆にものを手放せない人は持ってる方が捨てるより快感があるって感じみたいっす。私のように持ち物をどんどん処分していくミニマリスト志向の人もいれば、何でも取っておきたがるタイプの人もいるわけです。

快を追い求める

あっという間に次の快へ・・・

快感ってのはすぐ慣れちゃうもんで、同じものを繰り返し体験するとどんどん快感が薄れていくんです。 進化の過程でこれが合理的だったからこそ、私たち人間は常に快を求め続ける生き物になったんだとか。ドーパミン駆動型の生存戦略ともいうべきです。 人は物事に満足するようにできていないので、常に欲求を求めているというわけ。 例えば子供に自転車を買い与えたら満足して終わり!...ではなく時間も経たないうちに次のおもちゃを探し回っているなんてことはよくあることです。 これを心理学用語で「ヘドニック・トレッドミル(快楽の踏み車)」というのだそう。

もっと身近なところで言うと、新型のIphoneを毎年買い替える人とかも例に漏れないですねー。その人が欲しい機能ややりたいことは今のIphoneでも十分にできちゃうんだけど、「もっとサクサクに!」「もっと高画質で写真を撮りたい」みたいな感じで見事にヘドニック・トレッドミルに載せられちゃってるわけですね。

毎日アイスを食べれるのは幸せだ!←間違い

人間は未来に得られる快を予測するのがヘッタクソなんです。例えば心理学の実験で30日間毎日タダでアイスクリームをもらえるという実験を行いました。実験に参加した人は当初「こんなハッピーなことがあるだろうか!」と浮かれ気分でいたんですが、実験が進むにつれてそのテンションは上がるどころか急降下。なんと10日あたりから離脱者が出はじめ、最終日を終えた人は憂鬱な気分になったそう。なんでこうなったかというと、先ほどでも触れましたが快に慣れてしまってそれが当たり前になったからです。それまでアイスを食べるのがご褒美だったのに日常的に食べれるようになって特別感がなくなり、実験だから毎日食べないといけなくなったと感じ始めたのです。 こんな感じで最初はハッピーが続くと思っていたが、終わってみれば不幸になってたという具合に人は将来得られる快感の予測的中率がめっちゃ低いことがわかります。 快は不快と表裏一体なんです・・・

不快を避ける

人間は不快感を避けようとする生き物でもあります。例えば買い物するときにお金を払うのがめちゃくちゃ嫌だったりするわけです。特に現金で支払うのがイヤで、金額が大きいほど躊躇しちゃうみたいな感じっす。

逆に言えば、現金以外の方法で支払わせれば、企業側としてはもっと簡単にお金を払ってもらえるってことっすかね。カジノなんかだと最初に現金をチップに変えるのも、そのへんの心理を突いてるって感じかもしれませんね。ネットショッピングでポチっとするだけで決済できちゃうのも、思わず衝動買いしちゃった経験のある人は多いんじゃないですかね。

この「不快感を避ける心理」のことを心理学では「損失回避」って呼ばれています。で、この不快感を避けたい気持ちを逆手に取った商品もあるみたいです。「コンプレックス・ビジネス」ってやつっすね。

例えば脱毛サロンなんかだと、ムダ毛が気になるっていうコンプレックスを解消するために利用する人が多いみたいな感じっす。整形とか育毛なんかもそういう側面があるのかもしれません。まぁ、これ自体は別に悪いことじゃないんですけど、中には効果のあやしい治療法だったり、ボッタクリ価格で売りつけようとする業者もいるみたいで、そういうのはニュースでもたまに取り上げられてますよね。

まとめ

人間の快楽と不快のメカニズムを理解することで、消費行動のパターンもある程度説明できるみたいです。企業側としては、快感を最大化し、不快感を最小化するような戦略を取ることが大事なわけですな。

個人的には、こういった人間の心理のクセを知っておくことで、自分の消費行動をコントロールするのにも役立ちそうな気がしますね。欲しいものをつい買っちゃったりするのを防げるかもしれませんし。

まーいずれにしても、この【「欲しい!」はこうして作られる】って本は、消費行動の裏側にある心理的カニズムを科学的に解き明かしてるみたいで、めちゃくちゃ面白かったっす。こういうのに興味ある人にはおすすめできるかと。内容はよく知られている行動経済学に関する知見が多かったので、元々好きな人にとってみれば復習になる本だと思います。 読み終わったあとは、自分の消費行動を冷静に見つめ直すきっかけにもなりそうです。