1. はじめに
Golangのテストについてまだまだ理解が浅いと感じたため、調べたことをメモしていきます。
テストは実行に時間がかかるとストレスを感じることもあるんですが、そんな悩みを解決してくれるのが、Golangのt.Parallelです。 本記事では、t.Parallelを使った並列テストの実現方法と、その重要性について深く掘り下げていきます。
2. t.Parallelの基本
t.Parallelは、Golangのtesting packageに含まれる関数の一つで、テストの並列実行を制御するために使用されます。Go言語のtestingパッケージを使うと、テストコードを作成することができます。しかし、開発するソフトウェアの規模が大きくなるにつれ、テストコードの量も増え、すべてのテストが終了するまでの時間も長くなります。特に、データベースへアクセスするようなテストでは、データベースへの通信時間がテストの実行時間の多くを占めることがあります。
そこで、テストを並列に実行することで、テスト時間を短縮することができます。t.Parallelを呼び出すと、そのテスト関数が並列に実行可能であることをテストランナーに通知します。
t.Parallelを使用するメリットは以下の通りです:
- テストの実行時間を短縮できる
- CPUリソースを効率的に活用できる
- テストの独立性を保ちながら、並行性の問題を検出できる
また、Go言語では複数のパッケージのテストを実行する際、デフォルトでパッケージ単位で並列に実行されます。つまり、異なるパッケージのテストは並列に実行されますが、同一パッケージ内のテストは逐次的に実行されます。並列に実行されるパッケージ数は、go testコマンドの-p
フラグで指定することができます。
ここまでをまとめるとt.Parallelを使うことで、テストの実行時間を大幅に短縮し、開発のスピードアップを図れるということです。
3. t.Parallelの使い方
では、実際にt.Parallelを使ったコード例を見ていきましょう。以下は、商品を扱うProductHandlerのListメソッドをテストするコードです。
func TestProductHandler_List(t *testing.T) { t.Parallel() // ... t.Run("find product error", func(t *testing.T) { t.Parallel() // ... req := &proto.ProductRequest_List{} res, err := h.List(ctx, req) // ... }) }
このコードでは、TestProductHandler_List関数とt.Run内の無名関数の両方でt.Parallelを呼び出しています。これにより、テスト関数とサブテストが並列に実行可能になります。
t.Parallel()メソッドを呼び出すと、そのテスト関数は一時停止し、他の並列テストと同時に実行されるようになります。t.Parallel()メソッドを呼び出していないテストがすべて終了してから、t.Parallel()メソッドを呼び出しているテストが並列に実行されます。
また、サブテストがt.Parallel()メソッドを呼び出している場合、親のテスト関数が終了するまでサブテストは一時停止します。つまり、親のテスト関数内のすべてのテストが完了するまで、サブテストは並列に実行されません。
t.Parallelは、以下のようなシナリオで特に効果を発揮します。
- 大量のテストケースがある場合
- 個々のテストに時間がかかる場合
- CIパイプラインでのテスト実行
例えば、Webアプリケーションのエンドポイントをテストする際、各エンドポイントのテストを並列に実行することで、テスト時間を大幅に短縮できます。
t.Parallel()メソッドを適切に使用することで、テストを効率的に並列化できます。ただし、並列化によるオーバーヘッドや、テスト間の依存関係などにも注意が必要です。
4. t.Parallelの注意点と制限事項
t.Parallelは強力な機能ですが、使い方を間違えると問題が起こる可能性があります。以下の点に注意が必要です。
共有リソースへのアクセス
- 並列に実行されるテストが共有リソースにアクセスする場合、適切な同期メカニズムを使ってデータの整合性を保つ必要があります。
実行順序の非決定性
- 並列に実行されるテストの実行順序は保証されません。テストが互いに依存していると、予期せぬ結果を招く可能性があります。
デッドロックのリスク
- 複数のゴルーチンが同じリソースをロックしようとすると、デッドロックが発生する可能性があります。
また、t.Parallelには以下のような制限事項や欠点もあります。
- 全てのテストを並列化できるわけではありません。テスト間に依存関係がある場合は、並列化に適さないことがあります。
- 並列化によるオーバーヘッドがあります。ゴルーチンの作成や同期処理などのオーバーヘッドがあるため、テストの実行時間が短い場合は、並列化のメリットが少ないこともあります。
並列に実行されるテストの最大数は、-parallelフラグまたはGOMAXPROCS環境変数で指定することができます。-parallelフラグを使用すると、t.Parallel()メソッドを呼び出しているテスト関数の同時実行数を制限できます。デフォルトではGOMAXPROCSの値が使用されます。
また、t.Parallel()メソッドを使っているテストでは、テスト終了時の後処理にt.Cleanup()メソッドを使うことを検討してください。defer文を使用すると、親のテスト関数が終了した時点で後処理が実行されてしまうため、サブテストの実行中に後処理が行われる可能性があります。t.Cleanup()メソッドを使用することで、すべてのサブテストが完了した後に後処理を実行できます。
これらの注意点や制限事項を理解した上で、t.Parallelを適切に使用することが重要です。
5. まとめ
本記事では、Golangのt.Parallelについて詳しく説明してきました。t.Parallelを適切に使用することで、以下のようなメリットが得られます。
- テストの実行時間を短縮し、開発のスピードアップに貢献する
- 並列実行によって、CPUリソースを効率的に活用できる
- テストの独立性を保ちながら、並行性の問題を検出できる
t.Parallelは、Golangのテストを効率化し、品質の高いソフトウェアを迅速に開発するための重要な機能です。
余談
ちなみにt.Parallel()の書き忘れ防止のための静的解析ツールもあるみたいです。 リソースを共有しなさそうなところでは積極的に使っていきたいですねー github.com
あと、自動挿入できるジェネレータもあるみたいです。
処理時間の短縮を計測した記事もありました。